太陽光発電を導入したものの電力に物足りなさを感じている、または売電収入を増やしたいと思い増設を検討している人はいるのではないでしょうか?
太陽光発電を増設することで得られるメリットはあります。ただし、増設に適した時期やポイントなどを知らないままだと、後悔することがあるかもしれません。
今回の記事は、太陽光発電の増設について以下の内容を解説します。
- 太陽光発電の増設とは
- 太陽光発電のメリット
- 太陽光発電を増設する際の注意点
- 太陽光発電を増設する時期
- 太陽光発電を増設する際のポイント
太陽光発電を増設して後悔しないための解説をしているので、検討している人は参考にしてみてください。
太陽光発電の増設とは
太陽光発電の増設とは、太陽光発電を導入済みで売電が始まっている状態の時に、新たに太陽光パネルを増やすことを指します。増設する主な理由は2つあります。1つは、これまで以上に増えた電力使用量をカバーするためです。2つ目は売電収入を増やすためです。どちらが理由かは人によりますが、増設するスペースがあるなら設置できる可能性があります。
ここで覚えておきたいのは「増設=過積載」ではないということです。過積載とは設置してる太陽光発電のパワコンの出力よりも多くなるように、太陽光発電を増設することを指します。パワコンの出力さえ超えなければ過積載にはならないため、増設しても問題ありません。ただし、10kW以上(産業用)の出力を超えて増設すると「事後的過積載」になり規制の対象になります。そもそも家庭用は10kW未満というルールがあり、一般的な家庭(3〜5人家族)であれば約5kWほどが最適な出力といわれていますので、売電収入が目的でも10kW未満を意識しましょう。
蓄電池の設置増加も影響
太陽光発電の増設をする理由として、足りない電力をカバーすることを挙げました。この理由のなかには「蓄電池の普及」が含まれています。蓄電池は2011年に起きた東日本大震災以降から、停電時への備えとして増えていることをご存知でしょうか。一般社団法人 日本電機工業会の調べによれば、2011年の出荷数が約2,000台だったのに対して、2017年には約50,000台という大幅な出荷数です。また蓄電池に関する補助金の影響もあり普及が進んでいます。
太陽光パネルの枚数を抑えて自家消費だけに利用してきた人にしてみれば、蓄電池を導入したくても今までの発電量だけでは物足りなくなる可能性があります。そういった人は、太陽光発電を増設して発電量を増やすことで、蓄電池への充電もしつつ快適な自家消費ライフが送れるでしょう。停電対策への意識の高まりや、より電力を有効活用しようとする動きが、蓄電池や太陽光発電の増設を後押ししています。
太陽光発電を増設するメリット
太陽光発電を増設するメリットは以下のとおりです。
- 節電効果がアップする
- 売電収入がアップする
- 売電期間を延長できる可能性がある
- 卒FIT後でも自家消費できる
- ピークカット時のカバーができる
- 停電対策になる
節電効果がアップする
太陽光発電を増設することで発電量が増えるため、節電効果がアップする可能性があります。太陽光発電のみで家庭内の使用電力を補えていない場合は、電力会社からの電力を購入しなければいけません。太陽光発電を増設して発電量が増えれば、より多くの自然エネルギーによる電気を利用できます。つまり電力会社から購入する量を減らせる可能性があるため、減らした分だけ節電効果がアップします。
売電収入がアップする
太陽光発電を増設すれば発電量の増加とともに、売電収入もアップする可能性があります。発電量が増加しても、日々の生活スタイルや季節要因で常に自家消費だけで使い切れるとは限りません。使い切れない電気は電力会社へ売電できるため、発電量が増えた分は売電収入の向上に期待できるでしょう。さらに、太陽光発電は増設しても設備の維持や管理に関わるコストが、ほとんど変わりません。ランニングコストを維持しながらも売電収入を増やすことが可能です。
売電期間を延長できる可能性がある
太陽光発電を増設することで、「FIT(固定買取制度)」の売電期間を延長できる場合があります。2009年11月から始まったFITは、電力会社へ売電する価格を国が一定期間保証してくれる制度です。期間は設置する出力で決められており、「10kW未満(住宅用)は10年間」「10kW以上(産業用)は20年間」となっています。つまり、2009年に10kW未満の太陽光発電を導入して、売電を開始した人は2019年中に期間満了となります。そこで太陽光発電を10kW未満から10kW以上に増設することで、FITの期間を「10年→20年」に延長させることが可能です。ただし場合によっては売電収入が減る可能性があるため、詳細な内容については後述します。
卒FIT後でも自家消費できる
FIT期間が満了した「卒FIT後」でも、増設した分の電力は自家消費に活かすことができます。卒FIT後は今までより買取価格は下がってしまいますが、余剰電力を売電することは可能です。また増設したことにより発電量が多くなっているため、場合によっては電力会社と契約しなくても全ての電気使用量をカバーできるかもしれません。太陽光発電は大きなトラブルや故障がない限りは20年以上運用することが可能なので、自家消費に大きく貢献してくれるでしょう。さらに蓄電池を導入した場合でも、充電しながら余裕のある自家消費が実現できる可能性があります。停電時に備えながらも増設後の太陽光発電の電気を有効活用できます。
ピークカット時のカバーができる
増設してピークカットが起きても、全体的に見ればプラスになる可能性があります。太陽光発電は発電量がパワコンの出力を超えてしまった分だけ、電気をカットする「ピークカット」が存在します。つまりカットされてしまった分の電気を、自家消費や売電に活用することができない状態です。一般的には増設した分だけ過積載(パワコンの出力を超えて増設すること)になるためパワコンのリュつ力を超えてしまう可能性が高く、余剰電力の有効活用ができなくなってしまうと思われがちです。
ただし、ピークカットが起こるのは日照量が多くても、1日に2〜3時間ほどといわれています。また日照量の少ない天候でも、増設したことで全体的な発電量はアップします。ピークカットは年間を通してみれば、曇や雨、雪などの天候にも左右されるため、常にピークカットが起こる状況ではありません。このような状況があるため、増設によるピークカットへの影響は少ないといえます。
停電対策になる
太陽光発電を増設すれば、全体の発電量が増えるため停電対策につながります。停電が起きて電気がストップしても、日中に太陽光が出ていれば発電が可能です。太陽光発電だけでも停電時には自立運転モードがあるため、100V/1500Wまでの電気を利用できます。ただし日照量が少ない日に停電すると、発電量が少なくなるため使用できる時間や機器が限られてしまいます。日照量が少なくても増設することで全体的な発電量を増やすことができるため、停電対策として安心できます。
太陽光発電を増設する際の注意点
太陽光発電の増設にはメリットが多いものの、以下の注意すべき点もあります。
- 追加費用が発生する
- 申請や届け出が必要になる
- 保証が外れる可能性がある
- 売電単価や期間が減る可能性がある
それぞれ解説します。
追加費用が発生する
新たに太陽光発電を増設することになるので追加費用が発生します。経済産業省のデータによれば、2022年度の太陽光発電1kWあたりの設置費用相場は約25.9万円です。例えば3kW増設することになれば、約77.7万円の追加費用が発生します。決して安い金額ではないため、増設する目的を明確にして導入を検討してみてください。また何気なく増設するだけではメリットが少なくなる可能性がありますので、増設の適切な時期については後述します。
申請が必要になる
2017年4月1日より改正FIT法が施行され、太陽光発電を新たに増設して売電収入を得る場合や合計出力が変更になった場合は「事業計画認定」を変更する必要があります。事業計画認定の変更手続きは以下の3つがあり、状況に合わせた変更を行います。
- 変更認定申請:増設などで出力が変更になるなどの大きな変更があった場合
- 事前変更届出:稼働前に実施日などの軽微な変更があった場合
- 事後変更届出:稼働後に名義などの軽微な変更ががあった場合
太陽光発電を増設する場合は、合計出力が変更になるため変更認定申請をする必要があります。このような事業計画認定の変更は専門的な内容になるため、必ず設置業者に詳細を確認しておきましょう。または事業計画認定を代行してくれる行政書士もいますので、状況に応じて相談してみるといいかもしれません。
保証が外れる可能性がある
既存の太陽光パネルとは別のメーカーのパネルを増設してしまうと、保証期間内であっても既存のメーカーの保証から外れてしまう可能性を知っておきましょう。また、パワコンの出力を超えるパネルを設置しても保証の対象外になる可能性もあります。保証の対象外になる以外にもリスクがあり、別メーカーのものを取り付けると既存のパワコンとの相性の悪さで使用できないケースもあります。その他、同メーカーでも中古の太陽光パネルを選んだり、過去に設置した業者とは別の業者に設置してもらうことで、故障やトラブルの原因にもつながることも考慮しておかなければいけません。
売電単価が減る可能性がある
太陽光発電を増設するときは事業計画認定の変更をする必要がありますが、新たに認定された場合は固定買取価格が下がってしまう場合があります。下記のケースは固定買取価格が下がってしまうため注意が必要です。
- 稼働前に認定を受けた場合:合計出力が3kW以上または3%以上増加した場合
合計出力が20%以上減少した場合 - 稼働前に次の条件を満たす場合:2016年4月1日~2017年3月31日の間に認定を受けており、2016年7月31日以前に継続契約をしている場合
- 稼働後に認定を受けた場合:合計出力が10kW以上に増加した場合
新たに認定されると、売電を開始した時の固定買取価格を引き継ぐことができず、事業計画認定時の価格が反映されてしまいます。そもそも固定買取価格は年々下がっているため、売電を開始した頃よりも売電収入は減ってしまうでしょう。増設しても上記の条件以内で抑えて固定買取価格を維持させるか、自家消費に使用するほうが得策です。
太陽光発電を増設する時期
太陽光発電を増設する時期に適しているのは以下のとおりです。
- 蓄電池を導入する時
- 消費電力が増えた時
それぞれ解説します。
蓄電池を導入する時
既存の太陽光発電を増設するのであれば、蓄電池の導入と一緒に行うといいでしょう。これまで既存の太陽光発電のみで自家消費や売電を行ってきた人は、蓄電池を導入することで蓄電池へ蓄える電気も必要になります。日照量が少ない日は発電量が少なくなるため、蓄電池へ充電を行うと自家消費に使える電気が少なくなってしまう可能性があります。蓄電池を導入しても余裕のある自家消費を実現するのであれば、同時に太陽光発電の増設を検討してみましょう。
消費電力が増えた時
これまで以上に消費電力が増えた場合も、太陽光発電を増設するタイミングとしては有効です。生活スタイルの変化や家族の人数が増えるなど、消費電力が増加するケースがあります。消費電力が増えれば太陽光発電のみでは自家消費できずに電力会社から電気を買うことになり、電気代が上がってしまう可能性があるでしょう。太陽光発電のメリットである自家消費や売電収入を維持するためにも、消費電力が増えたら増設を検討してみるのもいいかもしれません。
太陽光発電の増設時に知っておきたいポイント
太陽光発電を増設するにあたり、事前に知っておきたいポイントは以下のとおりです
- 保証が継続されるのか
- 太陽光発電の寿命がいつまでか
- 売電開始時期はいつか
- 売電期間の延長は可能か
- 増設した費用を回収できるか
- 増設時の補助金はあるか
それぞれ解説します。
保証が継続されるのか
太陽光発電を増設する際に気を付けたいポイントは、増設することによって現在の保証がちゃんと継続されるのかを確認するということです。太陽光発電のパワコンは無限に太陽光パネルをつなげることはできません。すでに解説したとおり、パワコンが出力できる限界を超えてしまうと保証対象外になる可能性があります。また、現在のメーカーとは違う他メーカーの太陽光パネルを設置する場合も、保証が外れてしまう場合があります。メーカーとしては推奨されていない使い方や同メーカーのパネル以外は、トラブルが起きても保証しきれないのが現状です。どうしてもパワコン以上の出力にしたい場合や、他メーカーの太陽光パネルを設置したい場合は、保証が切れる間近であれば良いかもしれません。太陽光発電は安い買い物ではありませんし導入後は20年以上運用できるものなので、必ず導入する太陽光パネルでも現在の保証が継続できるのかを確認してください。
太陽光発電の寿命がいつまでか
現在、使用していている太陽光発電設備の耐用年数を確認しましょう。通常、太陽光発電設備はメンテナンスを適切に行っていれば、20年以上は使用することができます。ですが既存の太陽光発電設備の耐用年数が近い時期に増設すると、故障による修理や買い替えの可能性が出てきます。そうなれば、さらに高額な費用がかさんでしまいます。増設しても保証が継続されていて保証期間が残っているうちであれば、トラブルが起きたとしても安心できるでしょう。太陽光発電の耐用年数と保証期間を確認しつつ、耐用年数が最低でも10年以上残っているうちに増設するほうが安心して長く使えるでしょう。
売電開始時期はいつか
いつ太陽光発電で売電を開始したのかという時期の確認も大切です。10kW未満の太陽光発電を設置している場合は、FITの単価が有効なのは10年間です。つまり10年過ぎてしまうと今までの単価では売電できなくなります。売電価格は年々下がっているのが現状です。例えば2014年に10kW未満の太陽光発電を設置した人の買取価格はで37円だったのに対し、022年には半分以下の17円にまで下がっています。卒FITになれば単純計算で売電価格が半分も減ってしまうことになります。そして卒FIT後に売電しようとしても、電力会社が買い取ってくれるのは10円を切るような単価が多いのが現状です。場合によってはキャンペーンなどで10円以上の単価で買い取ってくれることもあります。地域別で記載しますので、対象になる人は問い合わせてみるといいでしょう。
10円以上の買い取りを行っている電力会社例(2023年時点)
※同じプランでも地域によって10円以下になる場合あり
社名 | プラン名 | 買取単価(円/kWh) |
一条工務店 | 一条電気 | 沖縄以外:11円 |
idemitsuでんき | idemitsuでんきの太陽光買取(でんきセット買取プラン) | 北海道・東北・東京:11.5円中部・北陸・関西・中国・四国:10.5円九州:9.5円 |
ENEOS | ENEOS太陽光買取サービス | 北海道・東北・東京:11円中部・北陸・関西・中国・四国:10円九州:8円 |
住友林業 | スミリンでんき | 沖縄以外:11円 |
積水ハウス | 積水ハウスオーナーでんき | 沖縄以外:11円 |
積水化学 | スマートハイムでんき(電気の買取サービス・ソーラー+蓄電池もしくはVtoH設置の方) | 沖縄以外:12円 |
ダイワハウスでんき | 卒FIT電力買取(GENERALプラン)卒FIT電力買取(PREMIUMプラン)卒FIT電力買取(PREMIUM蓄電池プラン) | 沖縄以外:10円沖縄以外:11.5円沖縄以外:22円 |
ミサワホーム | ミサワでんき電力買取サービス | 沖縄以外:10円 |
丸紅新電力 | 卒FIT買取サービス(SHARPプラン) 卒FIT買取サービス(SHARPプラン蓄電池プレミアム) | 北海道・東北・東京・中部:11円北陸・関西・中国・四国:10円九州:9円沖縄:9.5円 北海道・東北・東京・中部:15円北陸・関西・中国・四国:14円九州:13円沖縄:13.5円 |
エバーグリーン・リテイリング | 卒FIT太陽光買取サービス(プレミアムプラン) | 北海道:11円東北・東京:10.5円中部・北陸・関西・中国・四国:10円九州:9.3円 |
売電期間の延長は可能か
すでに解説したとおり売電価格は年々下がっていますので、売電を始めた当時の単価で売るために延長を検証してみましょう。10kW未満で設置した人は期間満了が10年なので、単価を維持するには10年を過ぎる前に売電期間の延長ができるかがポイントになります。延長するには10kW以上に太陽光発電を増設することで、単価を維持したまま売電収入を得られる可能性があります。ただし、場合によっては買取価格が変更になってしまうケースがあるため、売電収入が逆に減ってしまうことは知っておきましょう。減ってしまう場合でも増設すれば全体的な発電量がアップし、快適な自家消費ができるようになります。
増設した費用を回収できるか
太陽光発電を増設する前に、現状の把握や増設した際の売電収入がいくら上がるのかなど、費用が回収できるのかをシュミレーションしてみましょう。特に売電収入目的で増設する場合は単価が下がってしまう可能性があるため、単価が引き継がれるのかを確認する必要があります。費用をかけて増設したのに元が取れなければ意味がありません。太陽光発電パネルの導入価格が下がってはいるものの、単価も同時に下がっています。採算が取れない可能性のほうが高い時代になってきているため、売電収入をメインにするのではなく自家消費で活用するほうがお得だといえるでしょう。
増設時の補助金はあるのか
太陽光発電の増設に対応している補助金は、自治体によって実施している可能性がありますので問い合わせしてみるといいでしょう。また過去に補助金を受けていても、下記の条件によっては受け取ることが可能です。
- 太陽光パネルの最大出力が10kW未満であること
- 太陽光パネルとパワコンを新規に設置すること
増設の際には初めに設置した太陽光発電の補助金よりも少なくなりますが、少しでも費用を抑えられるため確認しておきましょう。
まとめ
太陽光発電の増設は、節電効果のアップや停電時の対策になるなどのメリットが多くあります。一方で、増設時の条件によってはFITの単価が引き継がれずに、売電収入が下がってしまうこともあります。売電収入目的の人は、増設時に単価が変更になるのかをしっかりと確認しておきましょう。また単価が年々下がってることや、卒FIT後でも買い取ってくれる電力会社はありますが低いのが現状なので、自家消費に活用するほうがお得になるケースもあります。増設する目的を明確にして、当記事で解説したポイントを抑えつつ後悔のないようにしましょう。
新日本エネックスでは、太陽光発電の増設も多数の施工事例がございます。