太陽光発電の導入を検討している人のなかには、停電時でも安心して電気が使用できるのかが気になる人もいるのではないでしょうか?
結論をいえば、太陽光発電だけでも停電時に電気を使用することは可能です。ただし太陽光発電だけでは使用量などの気になる点もあり、蓄電池との併用でさらに安心できます。
今回の記事では太陽光発電と蓄電池の併用に関して以下の内容を解説します。
- 太陽光発電が停電時でも使える理由
- 停電時の自立運転モードの使い方とポイント
- 太陽光発電のみのデメリット
- 太陽光発電+蓄電池がおすすめな理由
- 蓄電池を後付けする際のポイント
- 太陽光発電+蓄電池がおすすめな人
太陽光発電と蓄電池の併用について詳細に解説しているので、検討している人は参考にしてみてください。
太陽光発電の電力は停電時でも使える理由
太陽光発電では「自立運転モード」という停電時に備えたシステムがあるため、電気が使えない状況でも活躍してくれます。では自立運転モードとは、どんなシステムなのかを詳しく解説します。
太陽光発電には「自立運転モード&コンセント」がある
太陽光発電は太陽光で作った電気をパワコンで直流から交流に変換し、家中で電気を使用できるようにしています。このパワコンは太陽光発電の消費量が多いときは電力会社から電気を買い取ってプラスし、少ない時は売電することができます。この電力会社とやり取りできる仕組みを「系統連系」といいます。
パワコンはコンセントから給電しているため、停電時には系統連系を使うことができません。そのため系統連系から太陽光発電とパワコンだけで電気を作って使えるように、自立運転モードに切り替える必要があります。そしてパワコンにはコンセントが付いており、屋内ならパワコン本体、屋外なら「非常用」などと書かれたコンセントが設置されています。停電時にはそれらを利用して電気を使用できるというわけです。
自立運転モードの使い方
自立運転モードの使い方を以下の流れで解説します。
- 非常用コンセントの位置を確認する
- 主電源のブレーカーをオフにする
- 太陽光発電のブレーカーをオフにする
- 自立運転モードへ切り替える
- 家電製品を非常用コンセントへ接続する
- 停電が終わったら自立運転モードを解除する
それぞれ解説します。
①非常用コンセントの位置を確認する
停電時に使用する非常用コンセントの位置を説明書や目視で確認します。非常用コンセントの位置はメーカーや工事内容によって変化します。屋内のパワコンの場合はパワコンの側面に付いていることが多く、屋外の場合は非常用などと書かれたコンセントが付いているはずです。非常用コンセントの位置が、どうしても分からない場合は設置業者に確認してください。
②自立運転モードの切り替え方法を確認する
自立運転モードの切り替え方法を取扱説明書で確認しましょう。後述する太陽光発電のブレーカーをオフにすることで自動的に切り替わる、または停電時に自動で切り替えてくれるものの、これらは機種によって異なります。
③主電源のブレーカーをオフにする
自宅のブレーカーをオフにしましょう。オフにする理由は、停電解除時に家電製品の動作が再開したときに、予期せぬ出来事(事故や火災など)を避けるためです。停電時であればブレーカーを落とす意味はありませんが、停電再開後の安全を考えて主電源のブレーカーをオフにしておきましょう。
④太陽光発電のブレーカーをオフにする
太陽光発電を停電時でも自立して使用できるように、太陽光発電専用のブレーカーをオフにします。このブレーカーは系統連系を行うために必要な、太陽光発電専用の分電盤のなかにあります。自動で切り替わる機種に関しては、この手順は不要です。
⑤自立運転モードへ切り替える
取扱説明書に記載されている方法に従って自立運転モードへ切り替えましょう。この時点で切り替わっている場合は、⑥へ進んでください。
⑥家電製品を非常用コンセントへ接続する
使用したい家電製品を非常用コンセントにつなげましょう。ただし非常用コンセントの差込口は1つもしくは2つほどです。非常用電源の近くにつなげたい電化製品がない場合は延長コードを、複数のコンセントをつなぎたい場合は電源タップを使用してください。使用できるワット数に関しては後ほど解説します。
⑦停電が終わったら自立運転モードを解除する
停電が解除されたら自立運転モードを解除しましょう。自動で復帰する機種の場合は何もする必要はありません。手動で行う操作が必要な場合は取扱説明書に従って解除し、最終的に安全性を確認して主電源ブレーカーをオンにしましょう。
停電に備えて自立運転モードを使用する際のポイント
停電時に備えて自立運転モードを利用する際のポイントは以下のとおりです。
- 非常用コンセントの位置
- 自立運転モードへの切り替え方法
- 同時使用できるのは最大1500W
- 連続使用する家電製品
それぞれ解説します。
非常用コンセントの位置
停電時でもスムーズに家電製品が利用できるように、非常用コンセントの位置を事前に確認しておきましょう。特に暗くなってから非常用コンセントの位置を知らない場合は、探すのに時間がかかったり探しづらい可能性があります。いざという時のためにも取扱説明書を読んだり業者に問い合わせるなどして確認しましょう。
自立運転モードへの切り替え方法
自立運転モードの切り替え方法は機種によって異なります。自動で切り替わるのか、手動で操作しなければいけないのかを確認しましょう。自動で切り替わって復帰する場合は、主電源ブレーカーをオンにするくらいです。手動で切り替える場合は今回ご紹介した流れが一般的ですが、細かい部分で異なる場合があるため必ず切り替え方法の確認をしておきましょう。
同時使用できるのは最大1500W
停電時でも太陽光発電の電気を使用できますが同時使用は最大1500Wという上限があります。非常用コンセントはあくまで「非常用」であるということや、家庭のコンセント事情によるものです。家庭用のコンセントは、ほとんどが15A・100Vに対応しています。最大W数は「15A(電流)✕100V(電圧)=1500W(電力)」となり、これらの条件を考慮している結果になります。ただし太陽光発電の発電量によっては消費電力が多い家電製品は利用できない場合があることや、200V対応機器は使用できないことを覚えておきましょう。
使用できる家電製品の消費電力の目安は以下のとおりなので、参考にしてみて下さい。
- アイロン:約1400W
- 炊飯器:約800~1300W
- ドラム式洗濯機:乾燥時は約200W 洗濯時は約1300W
- 電気ケトル:約800~1250W
- ドライヤー:約800~1200W
- 掃除機:強は約1000W 弱は約200W
- ハロゲンヒーター:約450~1000W
- こたつ:約600W
- テレビ:約200~500W
- 冷蔵庫:約150~300W
- ノートPC:約50~100W
- デスクトップPC:約150~300W
- LED照明:約6~10W
- スマホ充電:約5W
連続使用する家電製品
連続使用する家電製品を使用する際は注意が必要です。太陽光発電の発電量は天候によって左右されるため、常に安定した電力供給ができるとは限りません。例えばコンセントを使用してPCを利用する場合は、使用中に電源が落ちることも考えられます。なんらかの作業をしていた際に、保存していない場合はデータが復元できないこともありえるでしょう。電気を使用することで必要な作業がストップする家電(PCや炊飯器など)の利用には気を付けましょう。
太陽光発電のみの停電時のデメリット
太陽光発電のみでも停電時に電気が利用できるものの、以下の気になる点もあります。
- 停電時に自力で切り替えなければいけない
- 使用できない家電製品がある
- 家中の家電製品は使えない
それぞれ解説します。
停電時に自力で切り替えなければいけない
機種によっては手動で自立運転モードに切り替える作業が発生します。停電が昼間であれば作業はしやすいですが、夜になるとブレーカーの場所や取扱説明書の確認に手間取る可能性があります。普段から切り替え方法を確認しておくか、導入前であれば自動で切り替わる機種を選択するといいでしょう。
使用できない家電製品がある
自立運転モードで使用できるのは100Vかつ最大1500Wまでです。200V対応のエアコンなどの電化製品は使用できません。また発電量は天候に左右されるため、使用できる家電製品でも組み合わせによっては使えない場合もあるので注意が必要です。
家中の家電製品は使えない
太陽光発電で発電して使える電力は最大1500Wなので、家中の家電製品をカバーすることはできません。太陽光発電の自立運転モードは、あくまで「非常用」なので日常のように家電製品が使えないことを覚えておきましょう。
このようなデメリットを解消する方法として、おすすめなのが蓄電池との併用です。
停電時以外でも活躍する「太陽光発電+蓄電池」のメリット
停電時でも太陽光発電で電気を作って使用できますが、より安心して気兼ねなく電気を使うためには蓄電池との併用をおすすめします。「太陽光発電+蓄電池」を併用するメリットは以下のとおりです。
- 停電時でも家中の家電製品が使える
- 停電時でも長時間の使用が可能
- 停電時は自動でモードが切り替わる
- 節電効果がアップする
それぞれ解説します。
停電時でも家中の家電製品を使える
蓄電池の「全負荷型」を導入すれば、停電時でも家中の電化製品を使用することができます。全負荷型は停電時に自動で家中の家電に電気を供給してくれるタイプです。太陽光発電との併用で素晴らしい部分は、太陽光発電の余剰電力を蓄電池に貯めておくことができる点です。太陽光発電のみの場合よりも多くの電気を貯めることができるため、停電時でも普段どおりの生活ができます。また200V機器に対応している蓄電池を選べば、家中の家電製品をカバーできます。
停電時でも長時間の使用が可能
太陽光発電だけでは天候や時間帯によって発電量が左右されるため、場合によっては電気を長時間使用できません。蓄電池であれば天候や時間帯に関係なく貯めた電気を、太陽光発電よりも長時間使用することが可能です。使用できる時間は蓄電池の容量や家族構成などによりますが、4人家族の場合は1日平均10kWhほど使用するといわれています。ですから10KWh以上の容量であれば、1〜1日半ほどは蓄電池の電気だけでも普段どおり使用できます。
また、
停電時は自動でモードが切り交わる
太陽光発電の機種によっては停電時に手動で自立運転モードに切り替える手間が発生しますが、蓄電池には停電時に自動で自立運転に切り替わる「非常運転モード」「バックアップモード」などが備わっています。購入時に自動で自立運転に切り替わるように設定されているか確認しておきましょう。必要であれば手動で切り替えることもできますが、自動の切り替えに設定しておいたほうが安心です。
節電効果がアップする
太陽光発電と蓄電池を併用すれば節電効果がアップします。昼間の電気料金の高いピーク時には太陽光発電の電気を使いつつ、余剰電力を蓄電池に貯めておきます。夜のピーク時に蓄電池に貯めた電気も使えば、かなりの節電効果が得られます。蓄電池と太陽光発電の組み合わせは、電気料金を節約するための最適な方法の一つといえます。
蓄電池を後付けで設置する時のポイント
すでに太陽光発電を導入しており、蓄電池を後付けで設置する際のポイントは以下のとおりです。
- 蓄電池の容量
- 太陽光発電との相性
- パワコンの種類
- 保証の確認
- 業者選び
それぞれ解説します。
蓄電池の容量
蓄電池の容量は初期費用や導入後の生活に大きく関わってきます。容量が多いほど貯められる電気が多くなり、節電効果が高くなり停電時には安心できるでしょう。ただし初期費用が高くなったり、大きさによる設置するスペースの問題があります。一般的な4人家族では1日の電気使用量は10kWh前後といわれていますので、この数値を目安にするといいでしょう。
また設置する目的が「停電時に安心して長く電化製品を使いたい」ということであれば容量の多い蓄電池が必要ですし、普段からあまり電気使用量が少ないけど「少しでも節電効果を高めたい」ということであればコンパクトな蓄電池でもいいでしょう。費用・家族構成・生活スタイル・導入目的などを明確にして最適な容量を選ぶことをおすすめします。
太陽光発電との相性
基本的に太陽光発電と蓄電池は相性が良いものの、太陽光発電と蓄電池が別々のメーカーの場合は事前に確認が必要です。メーカーによってはうまく連携できなかったり、発電効率が悪くなる場合があります。太陽光発電と同じメーカーの蓄電池を導入すれば相性は問題ありません。また太陽光発電のメーカーにあまり影響を受けない蓄電池もあるため、事前に確認をしておくといいでしょう。
パワコンの種類
蓄電池を後付けする場合は、パワコンの種類をどうするか検討しましょう。太陽光発電にはすでに太陽光発電用のパワコンが設置されています。そして蓄電池には、蓄電池用パワコンが付いている「単機能型」、太陽光発電と併用できるパワコンが付いている「ハイブリッド型」があります。
単機能型蓄電池を導入するとパワコンが2つ(蓄電池用と太陽光発電用)になり、電気を変換する回数が増えるため発電効率が悪くなりがちです。その代わり価格は安めに設定されています。一方でハイブリッド型蓄電池は、太陽光発電と蓄電池のパワコンが1つだけで変換する回数が少ないことで発電効率が高くなります。ただし太陽光発電側のパワコンを取り外す必要があり、元々の価格が高めなので費用が多くなりがちです。
単機能型蓄電池を導入する場合は、太陽光発電のパワコンが新しい場合におすすめです。ハイブリッド型を導入する場合は、太陽光発電のパワコンが古く(10〜15年)なっている場合におすすめです。
保証の確認
ハイブリッド型蓄電池を導入する際は、太陽光発電の保証が継続されるのかを確認しましょう。太陽光発電は一般的に最低でも10年(有償なら15~20年もあり)の保証が付いていますが、ハイブリッド型の蓄電池の導入によってパワコンを取り外す場合は保証が切れてしまう可能性があります。設置業者や太陽光発電メーカーに、ハイブリッド型蓄電池の導入で保証が切れるのかどうかを確認することをおすすめします。
業者選び
蓄電池を導入する際は信頼できる業者を選びましょう。蓄電池や工事費の価格は適正か(必ず相見積もりをして相場を知る)、分からない疑問にしっかり答えてくれる(蓄電池や補助金、保証など)、担当者の接客態度(電話対応やレスポンスの速さなど)から判断しましょう。あまりにも初期費用が安すぎても高すぎても不安が残りますし、レスポンスが遅かったり対応が悪くても不信感を抱くでしょう。蓄電池は安い買い物ではないため、トラブルを避けるためにも慎重に選ぶ必要があります。
「太陽光発電+蓄電池」がおすすめな人
「太陽光発電+蓄電池」の組み合わせがおすすめな人は以下のとおりです。
- 停電時でもいつもどおり生活したい人
- より節電効果を求める人
それぞれ解説します。
停電時でもいつもどおり生活したい人
太陽光発電と蓄電池を併用すれば、停電時でも長時間の家電製品を使用することができます。太陽光発電だけでは100V・1500Wまでと制限されている上に、天候によって発電量が左右されるため不安定で長時間使用は困難です。蓄電池を活用すれば太陽光発電の余剰電力を貯められますし、200V対応・全負荷型であれば家中の家電製品を使用することができます。さらに急な停電でも自動で電気を給電してくれるモードがあるため安心です。
より節電効果を求める人
太陽光発電と蓄電池は、お互いの弱点を補えるため節電効果が高くなります。太陽光発電は電気を貯められないことが弱点で、蓄電池は電気を作れないことが弱点です。併用することで太陽光発電で自家発電した余剰電力を蓄電池に貯めることができ、日中の電気料金が高いピーク時に蓄電池から電気を補えます。売電価格が年々下がっていることを考えても、売るよりも使ったり貯めたりして有効活用するほうがお得な時代になっています。より幅広く家電製品を使えて節電効果も高くなるため、太陽光発電と蓄電池の併用はおすすめです。
まとめ
太陽光発電は停電時でも「自立運転モード」が備わっており、非常用コンセントから「100V・1500W」という制限のなかであれば家電製品を使用することができます。メーカーによって自立運転モードは自動で切り替わるものがあれば、手動で切り替える必要のあるものがあります。この自立運転モードはあくまで「非常用」であり、消費電力の多い家電製品や長時間使用には向いていません。
蓄電池と併用することで、より多くの恩恵を受けることができます。200V対応かつ全負荷型であれば停電時でも家中の家電製品を使用でき、容量が大きいほど長時間の使用が可能です。停電時に自動で給電するモードもあり安心です。また太陽光発電の余剰電力を蓄電池に貯めて、昼間のピーク時に活用することで節電効果がアップします。蓄電池を後付けする場合は、ご紹介したポイントを参考にして頂き、後悔のない節電ライフを送りましょう。