最近では、電気代の高騰や災害時の停電対策として、電気を自給自足する生活である「オフグリッド」を求める動きが世界中で広まっています。
しかし、ほとんどの人はオフグリッドついて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、
- オフグリッドの仕組み
- オフグリッドのメリット・デメリット
- オフグリッド生活を達成した実例
- オフグリッドを始めるときに活用できる補助金
上記のようなことについて解説します。
この記事を読めば、オフグリッドについての基礎的な知識や具体的かつ現実的な実践方法が理解できるので、ぜひ参考にしてみてください。
オフグリッドとは?生活の仕組みを解説
オフグリッドとは、電力会社の送電網(グリッド)に頼らない、つまり電力を自給自足して生活することを意味します。
太陽光発電や風力発電、地熱発電といった自然エネルギーを利用して、電力会社から電気を購入せずに暮らすため、環境に負担をかけない画期的なシステムとして世界中が注目している生活です。
身近な例で言うと、道路標識の電光掲示板や電灯などもオフグリッドが導入されているケースがあります。
自然災害による停電時などに安全を確保しなければいけない場所に、少しずつオフグリッドのシステムを取り入れているわけです。
オフグリッドの電力源は太陽光発電が基本
オフグリッドは、太陽光発電や風力発電、地熱発電のような自然エネルギーを利用するシステムと解説しましたが、オフグリッドで主に使われているのは太陽光発電です。
太陽光発電以外の自然エネルギーは、運用するための場所や気候などの条件が厳しいため、オフグリッドではあまり扱われません。
太陽光発電であれば、発電する元になる太陽光はどこにでも存在し、安定した電力の供給を行えるため、オフグリッドとの相性は抜群です。
そのため、現在のオフグリッドを導入する際には太陽光発電システムとセットが基本になります。
完全なオフグリッド生活はまだ厳しい
先ほど解説したように、オフグリッドでは主に太陽光発電を主電源とします。
しかし、一般的な家庭において、太陽光発電だけでは家全体の電力を賄えないのが現状です。
太陽光発電システムが他の自然エネルギーよりも安定性があるとはいえ、やはり地域の気候やその時の日射量などによって発電量が変化します。
ですから、これからオフグリッド生活を始めるのであれば、以下のように工夫する必要があるでしょう。
- 生活に最低限必要なものだけオフグリッドで活用する
- 基本はオフグリッドで生活し足りない電力は電力会社から購入する
- 電力をあまり使わないライフスタイルに変更してオフグリッドを活用する
後ほど紹介しますが、現在完全オフグリッド生活を達成している方も、最初はガスや電力会社の電気を併用しながら少しずつ工夫し、徐々に完全なオフグリッド生活に移行しています。
いきなり完全なオフグリッドを目指すのではなく、まずは生活の一部にオフグリッドを取り入れて、様子を見ながら切り替えていくのがいいでしょう。
オフグリッド生活のメリット
オフグリッド生活を始めると、どのようなメリットがあるのか、オフグリッドにさらに興味を持っていただくために詳しく掘り下げていきます。
オフグリッドで得られるメリットは主に以下のようなものです。
- 電気代を大きく削減できる
- 停電時にも安心して電気を使える
- 自然環境に優しく持続可能な社会に貢献できる
電気代を大きく削減できる
オフグリッドは、自然エネルギーを利用して発電した電力を使うため、電力会社から購入する電気を削減でき、結果的に毎月の電気代を減らすことができます。
最近では、燃料調整費や再エネ賦課金の高騰による電気代の値上げが全国的に問題になっています。
そのため、オフグリッドをご家庭に導入することで、電気代の高騰に家計を左右されない安定した生活を実現できるでしょう。
現在の電気代に悩んでいる方は、生活の一部にだけオフグリッドを取り入れて、どれだけ電気代を削減できるか試してみるといいかもしれませんね。
>>自家消費型の太陽光発電はメリット大!電気代高騰対策にオススメな理由を解説
停電時にも安心して電気を使える
オフグリッドをご家庭に導入すると、自然災害などによる停電時にも安心できます。
最近では、台風や地震による停電が頻発しており、
- 2006年:首都圏停電(139万軒が3時間の停電)
- 2011年:東日本大震災(400万軒が4日間の停電)
- 2016年:熊本地震(47万軒が数時間〜4日間の停電)
- 2018年:北海道東部地震(290万軒が数時間〜2日間の停電)
- 2018年:台風第21号(225万軒が数時間〜16日間の停電)
- 2019年:房総半島台風(93万軒が数時間〜2週間の停電)
上記のように、数時間から数日に及ぶ停電が起こる可能性を想定しておく必要があります。
太陽光発電システムによるオフグリッドがあれば、日中は太陽光を電力に変えて生活し、日が暮れても蓄電池に貯めておいた電力を利用して、普段通りとはいかないまでも不自由ない生活ができるでしょう。
>>太陽光発電は停電時にも大活躍!蓄電池との併用でさらに安心できる理由
自然環境に優しく持続可能な社会に貢献できる
近年、SDGsをはじめとした、持続可能な社会を目指す動きが世界的に活発になっています。
もし、全ての世帯がオフグリッドを家庭に導入することが実現できれば、それぞれの家が自分たちで使う分のエネルギーを自家発電・自家消費でき、人類が目標とする持続可能な社会に大きく前進できるでしょう。
エネルギー資源に乏しい日本では特に、太陽光発電をはじめとした自然エネルギーを普及させることは急務として、国や自治体も補助金などの様々な後押しをしてくれています。
オフグリッド生活のデメリット
では、次にオフグリッドのデメリットについて紹介します。
先ほど解説したように、オフグリッドには多くのメリットがありますが、やはりまだ課題も多く、以下のようなデメリットを抱えているのが現状です。
- 電気の供給が安定しない
- 導入費用とメンテナンス費用が発生する
- 自然災害などで故障する可能性がある
電気の供給が安定しない
オフグリッドの基本となる太陽光発電は、風力発電や地熱発電など他の自然エネルギーよりも、電力の供給が安定します。
しかし、それでも太陽光を発電する材料にしているため、冬季や梅雨のように曇りが続くとどうしても発電量が低下してしまうのです。
日射量の多い時間帯に余剰電力を貯められる蓄電池を併せて導入したとしても、やはり悪天候の時期に家庭で使う電気全てを、太陽光発電だけで賄うのは難しいでしょう。
完全なオフグリッド生活には様々な工夫が必要なので、まずは太陽光発電と電力会社による電気を併用するのが現実的です。
導入費用とメンテナンス費用が発生する
オフグリッドを始めるには、太陽光パネルやパワーコンディショナー、蓄電池といった太陽光発電システムの導入費と、維持するためのメンテナンス費用が発生します。
各種設備の価格は年々安く、また性能は向上していますが、それでもやはり一式を揃えるための費用は決して安いものではありません。
とはいえ、現在の電気代の高騰や国や自治体からの補助金が支給されることを考えると、初期投資は十分回収できるでしょう。
また、施工業者によっては初期費用を0円で太陽光発電システムを導入できるサービスである「0円ソーラー」を展開している場合もあるので、オフグリッドを始める際、初期費用に不安がある方は調べてみましょう。
「0円ソーラー」については、下記で詳しく解説しているので参考にしてください。
>>無料で設置できる!注目の0円ソーラーについて分かりやすく解説
自然災害などで故障する可能性がある
太陽光発電システムの中で故障が多いものは太陽光パネルです。
家の屋根に設置するため、台風や強風による影響を受けやすく、パネルの破損や汚れによる発電効率の低下が起きる可能性があります。
また、自然災害の他によくある故障の原因として鳥類による被害もあり、カラスなどが落とした糞の付着によるホットスポットからの火災が起きるケースもあるため注意が必要です。
ですから、このような故障が起きることを想定し、定期的なメンテナンスやメーカー、もしくは施工業者による保険に加入し、万が一の時の備えをしておきましょう。
オフグリッドを導入した実例を紹介
ここまでオフグリッドについての基本知識やメリット・デメリットを解説してきましたが、いまいちオフグリッドの生活をイメージできない方も多いでしょう。
ですから、ここでは実際にオフグリッドを取り入れて生活している方の実例を紹介したいと思います。
オフグリッドの生活に興味を持たれた方は、以下の実例を参考に始めるかどうかの判断材料にしてみてください。
- 「TIMERの宿」様
- 「サトウチカ」様
オフグリッドの実例①:「TIMERの宿」様
TIMERの宿様は、元々みかん畑があった棚田の土地に移住し、太陽光発電といった新しいテクノロジーを取り入れながら、古材や廃材を再利用した環境に優しい自然エネルギーを体験できる民宿を経営している方です。
電力源は太陽光発電を基本とし、生活に必要最低限の家電だけを残しながら、様々な工夫を凝らしてオフグリッド生活を実現しています。
TIMDERの宿様がオフグリッドを始めたきっかけや、実現するまでの道のりなどは、これからオフグリッドを始める方の参考になると思うので、興味がある方は下記公式ホームページを確認してみましょう。
オフグリッドの実例②:「サトウチカ」様
次に紹介するのは、一軒家でありながら完全なオフグリッドを実現している「サトウチカ」様です。
サトウチカ様は、屋根に設置した太陽光パネルと、発電した電気を貯めておくバッテリー、あとは、電気を家庭で使えるように変換するインバーター、過充電を防ぐチャージコントローラーだけで電気を自給自足しています。
サトウチカ様がオフグリッドを始めたきっかけとしては、東日本大震災による長時間の停電から、「電気が使えないだけで何一つできない自分に無力感を覚えた」からと発言されています。
太陽光パネルによる発電だけでは一般的な家庭の全電力は賄えないため、節電対策をはじめ、消費電力をできるだけ減らす工夫をして完全オフグリッドを実現したそうです。
また、サトウチカ様は新聞やテレビ、雑誌などのメディアで紹介され、「オフグリッド女子」と呼ばれるほど有名な方になっています。
現在は、オフグリッドを全国に広めるために本を出版したり、講演会を開いています。
サトウチカ様に興味を持たれた方は、下記のサイトで経歴やオフグリッドの工夫について詳しく紹介されているので参考にしてみてください。
>>サトウチカさんの楽しく健やかなオフグリッド生活|Solar Energy Magazine
オフグリッド生活に役立つ省エネ設備を紹介
オフグリッド生活を始めるためには太陽光発電システムが必須であり、またご家庭のエネルギーをガスではなく電気で賄う必要があります。
ここでは、これからオフグリッドを始める際に役立つ省エネ設備について紹介していくので参考にしてみてください。
オフグリッドに役立つ省エネ設備は以下の通りです。
- 太陽光発電システム
- 電気温水器、エコキュート
- IHコンロ
- LED照明器具
太陽光発電システム
太陽光発電システムは、オフグリッド生活の中で重要なものであり、以下のようにシステムを構成する設備があります。
- 太陽光パネル
- パワーコンディショナー
- 蓄電池
まず、太陽光パネルは太陽光を受け止めるためのパネルのことです。
「太陽電池モジュール」「ソーラーパネル」といった呼ばれ方もします。
この太陽光パネルは電気を蓄えるためのものではなく、電気を作り出すための設備です。
メーカーや製品によって、太陽光パネルの発電効率や形状、価格は様々であり、導入する際には自身の状況に合わせたものを選ぶ必要があります。
太陽光パネルの選び方や種類、各メーカーの特徴などは下記で詳しく解説しているので参考にどうぞ。
そして、パワーコンディショナーは太陽光パネルによって作り出した電力を一般家庭で使えるように変換する設備のことです。
つまり、電力の「変換」と「安定」を司るのがパワーコンディショナーの役割になります。
また、蓄電池は太陽光パネルで生み出した電力を蓄えておく設備のことです。
蓄電池がなければ、昼間に発電した電力のうち余剰部分を蓄えられずに無駄にしてしまい、また日光がなくなつ夜半の時間帯に、太陽光発電による電力が使えません。
ですから、オフグリッド生活を成立させるには、太陽光パネルとパワーコンディショナー、そして蓄電池も導入する必要があるというわけです。
電気温水器、エコキュート
電気温水器とエコキュートは、どちらも電気の力を使ってお湯を沸かすシステムのことですが、エコキュートは主に空気中の熱を利用(ヒートポンプ式)します。
この2つのうち、エコキュートは省エネ性能が高く、太陽光発電と連携することで毎月の電気代を大きく削減できるのが特徴です。
つまり、オフグリッドを始めるのであれば、電気温水器の中でも消費電力が少なくなるエコキュートを導入することで、完全なオフグリッドに一歩前進できます。
エコキュートと太陽光発電の連携でどれだけ節電効果があるか詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>>エコキュートと太陽光発電の連携で節電効果をアップさせよう!
IHコンロ
IHコンロについては、すでに広く普及しているため説明はあまり必要ないでしょう。
完全なオフグリッド生活をするには、エネルギー源を電気に変える必要があり、コンロも給湯器も電気に絞ることでエネルギー効率がよくなります。
また、ガス会社との契約を止めることで、基本料金をなくせるため毎月の光熱費も抑えられるでしょう。
LED照明器具
オフグリッドを目指すには、家電の消費電力をできるだけ少なくする必要があります。
LED照明であれば、従来の蛍光灯に比べて消費電力を約7割ほど削減できるため、LED照明は効率的な省エネ対策として重要な要素の一つです。
オフグリッド生活を始めるのに活用できる補助金
オフグリッドでは、太陽光発電が必須になりますが、初期費用の面で不安を持たれる方が多いと思います。
国や地方自治体が公募している補助金を活用することで、太陽光発電を導入する際の費用を抑えられるでしょう。
ただ、太陽光発電のみを対象にした補助金は存在せず、太陽光発電を含めた省エネ設備を対象にした補助金が多いので、注意が必要です。
例として国からの補助金としては以下のようなものがあります。
- ZEH支援事業
- 次世代ZEH+実証事業
- こどもみらい住宅支援事業
また、地方自治体の補助金はそれぞれの地域によって名称や内容が変わるため、ここでは例として福岡県の補助金について紹介します。
- 福岡市住宅用エネルギーシステム導入促進補助金
- ふくおか県産材家づくり推進助成制度
実際にお住まいの自治体で公募されている補助金については、自治体のホームページを確認しましょう。
上記の補助金の内容について、詳細な情報を知りたい方は下記を参考にしてください。
>>【2023年】福岡市で利用できる太陽光発電の補助金と活用ポイントを解説
まずは「セミオフグリッド」生活から始めるのがオススメ!
ここまでオフグリッドについて、仕組みやメリット・デメリットについて解説してきましたが、完全なオフグリッドでの生活は困難と言えます。
そのため、まずは生活の一部だけをオフグリッドで賄う「セミオフグリッド」から始めるのが現実的です。
つまり、太陽光発電による電力だけでいきなり生活するのではなく、必要に応じて電力会社からの電気を購入するライフスタイルを目指しましょう。
太陽光発電によるオフグリッド生活に興味がある方は、私たち新日本エネックスに一度ご相談ください。
新日本エネックスは太陽光発電をはじめとした省エネ設備への豊富な実績から、オフグリッド生活を導入できるか、また始める手順について最適な提案をいたします。