「電気代の値上げに関係する託送料金って、どんな料金なの?」「上がった電気代を節約する方法も知りたい」といった不安を抱えているのではないでしょうか。
託送料金は電気代の値上がりに関係している料金です。託送料金について理解を深め、上がった電気代を節約していくことが大切です。
今回の記事では、託送料金の基礎知識から値上げされた原因、電気代の節約方法まで解説しています。本記事を読めば託送料金や電気代の値上がりに関する悩みが解消され、効果的に節電できる可能性があるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。
託送料金とは送配電ネットワーク利用料のこと
託送料金とは、電力会社から各家庭へ電気を送るために必要な「送配電ネットワーク」を利用するための利用料です。託送料金は電気を売る小売電気事業者から、電気を必要とする家庭や会社などへ電気を送電するときに必ず支払います。
託送料金には「人件費、設備修繕費、減価償却費、固定資産税、電源開発促進税、賠償負担金、廃炉円滑化負担金」などが含まれています。これらは送配電ネットワークの維持や管理に使用され、電気を安定して送電するために必要な費用です。
送配電ネットワークを所有している「一般送配電事業者(電力会社等)」は、経済産業大臣の許可を受けている10社があります。それぞれに割り当てられた区域で独占的に事業を行なっているのが現状です。
託送料金は、一般送配電事業者それぞれの申請をもとに経済産業大臣が決定しています。そのため一般送配電事業者によって託送料金が異なります。
託送料金の仕組み
託送料金は電気料金に含まれているため、託送料金が値上がりすれば電気料金も高くなります。低圧従量制に関する託送料金の計算式は「電気使用量(kWh) ✕ 低圧託送料金平均単価=託送料金相当額」です。
この計算式を見ると、電気使用量の増加でも託送料金が上がることがわかります。託送料金は一般送配電事業者側の単価と、利用者側の電力使用量によって変化する仕組みです。
※参考:九州電力
託送料金を計算してみよう
低圧従量制の託送料金は「電気使用量(kWh) ✕ 低圧託送料金平均単価」で計算できます。今回は一般的な4人家族の月間電力使用量である400kWhと、九州電力の2023年4月1日以降の低圧託送料金平均単価10.65円を用いて計算してみましょう。
託送料金は「400kWh ✕ 10.65円=4,260円(あくまで目安)」となります。例えば託送料金が1円、電力使用量が50kWh増えた場合は「450kWh ✕ 11.65円=5,243円」です。
このように託送料金は電力使用量と単価によって変化します。ただし託送料金は、あくまで相当額となっており、参考値であることを理解しておきましょう。
※参考:九州電力
大手電力10社の託送料金
経済産業大臣から許可を受けている、大手電力10社の低圧託送料金平均単価は以下のとおりです。
大手電力 | 低圧託送料金平均単価 |
北海道電力 | 11.02円 |
東北電力 | 10.75円 |
東京電力エナジーパートナー | 9.92円(東京電力エリア) |
中部電力ミライズ | 10.46円 |
北陸電力 | 8.98円 |
関西電力 | 8.20円 |
中国電力 | 10.59円 |
四国電力 | 10.69円 |
九州電力 | 9.19円 |
沖縄電力 | 10.92円 |
近年の託送料金は値上がりしつつあります。理由は送配電設備の老朽化や再エネの普及が進んでいるため、託送料金の値上げによってインフラ強化に必要な費用をまかなうためです。
そして2023年4月から始まった「レベニューキャップ制度」も、値上げの理由として挙げられます。
託送料金の値上げ原因はレベニューキャップ制度の導入
2023年からの託送料金の値上げには、レベニューキャップ制度の導入が関係しています。ここではレベニューキャップ制度について詳細に解説するので、ぜひ学んでみてください。
レベニューキャップ制度とは?
レベニューキャップ制度とは、一般送配電事業者の経営効率化を実現して利益を確保させるための制度となっています。具体的には一般送配電事業者が得る収入上限(レベニューキャップ)を5年間固定する間に、経営効率化を図り利益を出していく仕組みです。
一般送配電事業者は5年分の事業計画を作成して提出しなければいけません。固定されている収入上限は5年後に再審査され、一般送配電事業者の経営効率化により利益が確保できていれば、次の5年間は収入上限が下がります。
収入上限が下がるということは、一般送配電事業者の経営効率化が成功し利益を確保できている状態です。これまで一般送配電事業者の利益を確保するために、上乗せしてきた託送料金を下げることができます。託送料金が下がれば、結果的に電気代も安くなるというわけです。
レベニューキャップ制度は、一般送配電事業者と消費者の負担を減らすために必要な制度といえるでしょう。
レベニューキャップ制度が導入された背景
レベニューキャップ制度が導入された背景は、これまでの「総括原価方式」による算出方法の問題点を解消するためです。一般送配電事業者は公共性の高い事業なので、総括原価方式によって一定の利益を得られるようになっています。
近年は送配電設備の老朽化や再エネ普及の影響により、インフラ整備が必要不可欠です。インフラ整備をするためには多額の費用が必要なため、託送料金を上げて消費者への負担を強いても利益を確保しなければいけません。
しかし消費者にいつまでも負担を強いるわけにはいかず、一般送配電事業者の経営効率化による利益の確保が必須です。このようにインフラ整備のために必要な費用を捻出しなければならない一方で、消費者への負担も減らさなければいけない問題があります。
そこで5年間の収入上限を限定することで、限られた利益のなかで経営効率化を達成させることでインフラ整備の費用を捻出させる仕組みを作りました。レベニューキャップ制度は、インフラ整備の費用を捻出させつつも、消費者への負担を減らせるような制度になっています。
レベニューキャップ制度でもたらされる3つのメリット
レベニューキャップ制度には3つのメリットがあります。それぞれのメリットを解説するので、ぜひ学んでみてください。
コスト効率化
レベニューキャップ制度の導入により、一般送配電事業者のコスト効率化を促進できるようになっています。これまでは総括原価方式によって利益が確保されていたため、コスト効率化を図る必要がありませんでした。
総括原価方式とは違い、一般送配電事業者は限られた収入のなかで利益を得る必要があります。利益を出すにはコスト効率化が必要不可欠なので、一般送配電事業者は今まで以上にコスト効率化をしていくことになるでしょう。
消費者の負担軽減
レベニューキャップ制度は、消費者への負担を軽減するメリットもあります。収入上限が設けられているレベニューキャップ制度では、利益を出すために一般送配電事業者のコスト効率化が必須です。
一般送配電事業者がコスト効率化を図り利益を得られれば、消費者が負担していた託送料金を下げることができます。しかし、コスト効率化の効果は短期的に出るものではありません。
そのためレベニューキャップ制度を導入すると、しばらくの間は託送料金が上がることになります。しかし長期的に見ればコスト効率化の効果が出てくるため、将来的には託送料金が下がる可能性が高いといえるでしょう。
設備投資の資金確保
レベニューキャップ制度でコスト効率化を図り利益を残せるようになれば、送配電設備のインフラを整えるための資金確保ができます。
送配電設備のインフラを整えるための資金確保は、託送料金を上げる目的の1つでもありました。しかしレベニューキャップ制度によって、限られた収入上限のなかでも利益が確保できるようになれば、インフラの設備への投資に使える余裕が生まれます。
レベニューキャップ制度は今後のためのインフラ設備への投資、消費者への負担軽減を実現していける可能性を秘めているでしょう。
値上がりする電気代の節約方法
近年は託送料金の値上げとともに、さまざまな原因で電気代が上がっています。今回は値上がりする電気代に対する効果的な節約方法を解説するので、ぜひ実践してみてください。
電力会社や料金プランを見直す
契約している電力会社や電気料金プランを見直すことで、根本的に電気代を節約できる可能性があります。
例えば大手の旧電力で契約しているのであれば、電気代が安めの新電力に乗り換えるだけでも安くなることがあるでしょう。また同じ電力会社でも電気料金プランを見直すことで、電気代の節約につながることもあります。
電力会社や電気料金プランを今一度見直して、より安いプランに乗り換えを検討してみましょう。
家電製品の使い方を工夫する
家電製品の使い方を工夫すれば電気代の節約につながります。特にエアコンやヒーターなどの家電製品は消費電力が高めです。常に必要な家電製品ではないものの、夏や冬には電気代を上げる大きな原因になります。
例えばエアコンは夏の冷房時に1度上げると約13%、冬の暖房時に1度低くすると約10%の消費電力の削減に期待できるでしょう。そのほか「長期間使用していない家電製品は電源プラグから抜いておく、こまめに電源を消す、省電力モードを活用する」などを意識すれば、少しずつでも節電効果が得られます。
省エネ家電に買い替える
古い家電を省エネ家電に買い替えることでも電気代の節約が可能です。照明は一般電球とLEDを比べると約86%、冷蔵庫は10年前と比べると約40〜47%、テレビは9年前と比べると約42%、エアコンは10年前と比べると約17%の省エネにつながります。
古い家電を使い続ければ、故障の頻度が多くなったり修理費がかさんでしまったりと、費用や使い勝手の面でデメリットになるでしょう。最近の省エネ家電は価格こそ高いものの、長期的に見れば電気代の節約によって十分に元は取れる可能性が高いといえます。
節電グッズを活用する
節電グッズの活用は気軽に電気代を節約できる方法です。夏であれば窓際に「すだれ」を設置することで、日差しを抑えながらも風を部屋に入れることができます。また冷感インナーを着れば体感温度を下げることも可能です。
冬であれば断熱カーテンやシートを窓に設置すれば、屋内の熱を外に逃しにくくできるでしょう。湯たんぽや電気ブランケットなどを活用すれば、エアコンやヒーターなどの使用頻度を減らせる可能性があります。
節電を意識した生活スタイルに変える
家族で節電を意識した生活スタイルに変えると、電気代を抑えることができます。家族が集まりやすい夕方以降は、なるべく1つの部屋で過ごすようにすれば各部屋の電力使用量を減らせるでしょう。
また早寝早起きをすれば夜の電力使用量を減らせるため、電気代の節約につながるといえます。ほかにも節電につながるアクションを家族全員で意識すれば、自然と節電を実現できる可能性があります。
支払い方法を口座振替にする
電気代の支払いを口座振替にすると、割引が適用されるため電気代の削減ができます。口座振替に支払い方法を変更することで、多くの電力会社では55円/月の割引が適用されます。
55円/月という金額は少ないと思う人もいるでしょう。しかし支払い方法を変更するだけという少しの手間で、55円/月であれば年間で660円の節約につながります。口座振替の変更手続きは1〜2カ月ほど必要になる場合があるため、早めに申し込んでおきましょう。
太陽光発電や蓄電池を導入する
太陽光発電や蓄電池の導入で、電気代を大幅に節約できる可能性があります。太陽光発電は無料で電気を作り出せるため、自家消費に使用すれば電力会社からの買電量が減り、電気代を削減できるでしょう。
また太陽光発電の余剰電力を蓄電池に溜めておけば、太陽光発電が発電できない夜の時間帯に利用できます。太陽光発電と蓄電池は初期費用が高額になりがちですが、補助金を活用すれば安く導入できる可能性があります。
また太陽光発電と蓄電池を長期的に活用すれば、十分に元が取れるといえるでしょう。ぜひ太陽光発電と蓄電池の導入を検討してみてください。
まとめ
託送料金は一般送配電事業者が、家庭や会社などへ電気を送電するために必要な送配電ネットワークの利用料です。託送料金はインフラ整備や電力の安定供給のために、一般送配電事業者や消費者の負担が大きくなっています。
2023年からは今までの総括原価方式で問題視されていた部分を解消するために、レベニューキャップ制度が導入されました。レベニューキャップ制度は、一般送配電事業者と消費者の負担を減らせる可能性が期待されています。
短期的には託送料金が上がってしまうため、値上がりする電気代の節電対策が大切です。ぜひ当記事で紹介した節約方法を実践して、電気代の節約を行いましょう。
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