電気自動車を所有していたり、これから購入しようとしたりする場合「自宅に設置する充電用コンセントは何が最適なのか」気になっている人はいるのではないでしょうか?
電気自動車にとって充電する設備というのは非常に大切で、満充電までの時間に大きく影響します。しかし、どんな種類があって、どんな特徴があるのかなど分かりづらいかもしれません。
今回の記事は、電気自動車の充電用コンセントはV2Hが最適な理由ついて、以下の内容を解説します。
- 電気自動車の充電用コンセントの基本
- 電気自動車の充電用コンセントの種類
- 電気自動車の充電用コンセントをV2Hにするメリット
- 電気自動車の充電用コンセントをV2Hにする注意点
- おすすめの国内V2Hメーカー
電気自動車の充電が快適になるだけではなく、自家消費に利用して電気料金を削減できる可能性もあるので、ぜひ参考にしてみてください。
電気自動車の充電用コンセントとは?
電気自動車へ充電するための専用のコンセントです。電気自動車が走行するには電気を充電する必要があるため、充電用コンセントが必要になります。主に販売メーカーのディーラーやサービスエリア、ショッピングモールなどの施設に設置されています。そのため充電している電気自動車を見かけたことがあるかもしれません。近年では自宅に充電用コンセントを設置する人も増えてきました。
自宅に電気自動車の充電用コンセントが必要な理由
自宅に充電用コンセントが必要な理由は、大きく分けて3つあります。
- 安全性
- 充電時間
- 利便性
それぞれ解説します。
1.安全性
1つ目は「安全性」です。電気自動車は「大きな電化製品」ともいえるため、「わざわざ専用の充電用コンセントが必要なの?」と疑問に思う人がいるかもしれません。しかし自宅で使用する一般的なコンセントでは、安全性の部分に不安が残ります。電気自動車の充電用コンセントは火災などのトラブルを防止するため、電源プラグのロック機能が付いています。家庭用のコンセントには付いていないため、安全性を高める目的でも充電用コンセントは必要です。
2.充電時間
2つ目は「充電時間」です。ガソリン車と電気自動車を比較した際に、弱点とされる部分でもあります。電気自動車への充電は家庭用のコンセントの電圧(V)や出力(kW)では少なく、充電するのにかなりの時間が必要です。そのため電気自動車の充電用コンセントでは、電圧や出力を増やしたモデルがあります。充電時間が長ければ長いほど、電気自動車に乗れる頻度が減ってしまいます。特に毎日のように通勤や買物で使う人にとっては、充電時間の長さは死活問題といえるでしょう。そのため家庭用のコンセントでは電圧も出力も足りないため、充電用コンセントが必要になります。
3.利便性
3つ目は「利便性」です。こちらも電気自動車の弱点ともいわれる部分で、充電インフラ(充電できる設備)の少なさが課題です。富士経済の調査(※1)によると、電気自動車の2021年の新車販売台数は約469万台となっていますが、2035年の予想では約12倍の5651万台になることが予想されています。電気自動車自体の数は急激に伸びていくことが予想されていますが、充電インフラに関しては2015年から停滞傾向(※2)にあります。確実に増えてきてはいるものの、現時点では利便性という点においてガソリン車よりも劣る部分です。そのため、自宅で好きなときに充電できる充電用コンセントの必要性は高いといえるでしょう。
※1 参考:HV、PHV、EV の市場を調査
※2 参考:都道府県別補助金交付状況 充電設備
電気自動車の充電用コンセントを設置する最適なタイミング
電気自動車の充電用コンセントを設置する最適なタイミングは、理想をいえば「新築時」です。新築時であれば、他の工事と一緒に行えることから設置費用や手間が少なくなります。充電用コンセントの設置を想定して工事を行うことが可能なので、最低限の手間と費用で設置できます。しかし、後付けの場合は想定されていない場所に設置するため、配線や設置工事の手間が増えてしまい費用も多くなりがちです。
新築時に設置する場合の目安としては、簡易的な充電用コンセントであれば約2万円(取り付ける製品などで異なる)ほどで取り付けられます。一方で、後付けの場合は約7〜12万円が費用の目安(※3)とされています。新築する際は電気自動車の購入も検討しながら、充電用コンセントの設置を検討してみましょう。充電用コンセントは家電製品も使えるものにしておけば、車庫などで何かしらの作業をするときに使用できて便利です。
※3 参考:くらしのマーケットマガジン
電気自動車の充電用コンセントのタイプ
電気自動車の充電用コンセントには、大きく分けると以下の2種類があります。
- 普通充電
- 急速充電
それぞれ解説します。
普通充電
普通充電は、低出力かつ交流のままで電気自動車へ供給するため、充電スピードが緩やかです。そのため滞在時間が長めなレストランやホテル、テーマパーク、ショッピングモールなどに設置されていることが多いといった特徴があります。充電ポート(充電口)は「SAE J1772」「IEC62196-2 type1」という規格(※4)になっており、急速充電用には対応していません。作りがシンプルで小型であることから、設置費用が低く抑えることが可能です。小型かつ安価であることから、一般家庭の充電用コンセントとしても設置されています。
一番のネックは、やはり充電スピードの遅さです。特に出力が「3kW」のものを使用すると、かなりの時間を要します。例えば、日産リーフの40kWhのバッテリーを満充電にするまでは約16時間必要(※5)になります。通勤で使用する場合は、夕方18時に帰宅してから残量がほぼない状態で充電すると、満充電にするには翌朝の9時ごろまで時間が必要です。そのため予算に余裕があれば「6kW」の出力のタイプを選ぶと、充電時間が約半分になることは覚えておきましょう。
※4 参考:ShinDengen
※5 参考:NISSAN
急速充電
急速充電は、その名のとおり急速に充電できる充電用コンセントで、交流を直流に変換しているため出力が高いのが特徴です。一般的な充電用コンセントは「3〜6kW」ほどなのに対して、急速充電は「10〜50kW」と何倍もの差があります。例えば3kWで満充電まで20時間必要な電気自動車の場合、急速充電の50kWを利用すれば単純計算で約1時間20分ほどで満充電(状況によって変化する可能性あり)になります。また急速充電の充電ポートは「CHAdeMO(チャデモ)」という規格になっており、普通充電の規格とは異なることは覚えておきましょう。車種によってはCHAdeMO専用のコネクターが付いていたり、普通充電と急速充電を兼用できる充電ポートが付いていたりします。
このように便利な急速充電ですが、まだまだ設置数が少ない現状があります。設置してあるのはサービスエリアや道の駅、コンビニなどで、長距離を走行するための継ぎ足しで利用しやすい施設を中心に設置されているためです。また設置するには約300〜1,500万円ほどの高額な費用が必要(※6)になります。出力が高い設備や費用の面で、一般の家庭に設置するのは困難だといえます。今後、急速充電に対応する施設が増えれば、電気自動車の利便性はさらに向上していくでしょう。
※6 参考:くらしのマーケットマガジン
充電用コンセントの設備のタイプ
充電用コンセントの設備のタイプを、さらに分けると以下の3つがあります。
- 壁掛けタイプ
- スタンドタイプ
- V2H
それぞれ解説します。
壁掛けタイプ
自宅の壁に取り付けられるのが「壁掛けタイプ」です。自宅と駐車場の距離が近い場合に設置されるケースが多いのがこのタイプで、デザイン性が良くコンパクトに取り付けることができます。基本的には車載ケーブルを使用して充電しなければいけませんが、ケーブルが付属しているタイプであれば車から取り出す手間を省くことが可能です。また設置工事は比較的簡単なものになるため、低価格で取り付けられるといったメリットもあります。ただし施錠できないタイプは盗電される可能性があるため、保護カバーや鍵が付いているタイプを選択するといいでしょう。
スタンドタイプ
家と駐車場が離れていても設置できるのが「スタンドタイプ」です。ショッピングモールや公共施設などで見かけることが多いモデルですが、家庭用に作られたコンパクトなものもあります。こちらも壁掛けタイプ同様に車載ケーブルを使用して充電したり、本体のケーブルを使用して充電できるものがあります。壁掛けタイプよりも価格が高めですが、ダイヤル式の錠が付いていたりと安全性や機能性も高いのが特徴です。
V2H
電気自動車への充電だけではなく、バッテリーの電気を自宅へ給電できるのが「V2H」です。V2Hには業務用・家庭用のものがあります。一番のメリットは電気自動車を蓄電池としても使用できることです。電気自動車のバッテリーに貯めている電気を、停電時などに自宅へ給電できる機能が備わっています。壁掛けタイプやスタンドタイプでは、そのような機能はありません。その分、価格は高くなるものの機能性は抜群といえます。
電気自動車の充電用コンセントにV2Hを選択するメリット
電気自動車の充電用コンセントとしても利用できる、V2Hを選択するメリットは以下のとおりです。
- 充電時間は普通充電の約半分
- 停電時に電気自動車の電気を給電できる
- 電気料金を節約できる可能性がある
- 補助金が活用できる
それぞれ解説します。
充電時間は普通充電の約半分
V2Hは電圧や出力が高い(200V/6kW)モデルがあるため、普通充電よりも充電時間が約半分で行なえます。例えば日産のアリア(66kWhバッテリー)では、バッテリー警告が点灯して満充電までの時間は出力3kWで「約25.5時間」ですが、出力6kWでは「12時間(※7)」となっています。このように充電時間が約半分になるため、電気自動車の弱点の一つともいえる充電時間を短縮できます。
※7 参考:NISSAN
停電時に電気自動車の電気を給電できる
V2Hは電気自動車への充電が行えるだけではなく、停電時などに電気自動車のバッテリーから電気を自宅へ給電できます。電気自動車のバッテリー容量は蓄電池よりも多いため、満充電の場合は数日間ほど(※容量による)通常通りに家電製品を使用できる可能性があります。また安い深夜電力を充電して、昼間の電気料金が高い時間帯に給電することが可能です。V2Hを使用すれば、電気自動車を蓄電池としても活用できるようになるため経済性や利便性が高くなります。
電気料金を節約できる可能性がある
太陽光発電を導入している場合、電気自動車に充電する電気を無料で使えます。太陽光発電は自然エネルギーを活用して電気を生み出すため、発電した電気は無料です。その電気をV2Hを介して電気自動車へ充電すれば、電気料金を節約することができるでしょう。また太陽光発電を導入していない場合でも、安い深夜電力で充電しておき昼間の電気料金が高い時間帯に使用すれば節約できます。
補助金が活用できる
V2Hの設置費用は高額になりますが、補助金を活用すれば費用を抑えることが可能です。例えばニチコンのEVパワーステーション「VCG-666CN7(プレミアムモデル)」の場合は、本体価格が約100万円で工事費用が約30〜40万円になる(※8)ので、トータルで約130万〜140万円の費用がかかります。しかし補助金(令和4年度クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)を活用すれば、設備費で上限75万円/基、設置工事費で上限40万円/基の補助(※9)が出ます。大幅に設置費用を抑えられる可能性があるため、必ず補助金は活用しましょう。
※8 参考:EV DAYS
※9 参考:令和4年度クリーンエネルギー自動車導入促進補助金交付規程
電気自動車の充電用コンセントにV2Hを選択する際の注意点
電気自動車の充電用コンセントに、V2Hを選択する際の注意点は以下のとおりです。
- 初期費用が高額になる
- メンテナンスを考慮した設置スペースの確保が必要になる
- 電気自動車のバッテリーが劣化しやすい
それぞれ解説します。
初期費用が高額になる
すでに解説したとおりV2Hの初期費用は高額です。倍速充電に対応している出力の高いモデルでは、工事費と合わせて100万円を超えることも珍しくありません。ただし補助金を活用すれば、かなりお得に導入することが可能です。またリース費用として月額料金(太陽光発電は要見積り・V2Hは月額13,500円〜)を支払うことで太陽光発電とV2Hが0円で導入できる、「エネカリ(※10)」を利用するのも一つの選択肢です。利用期間中は修理やサポート、事前災害補償などが付いており、契約終了後は無償で譲渡してもらえます。
※10 参考:エネカリ
メンテナンスを考慮した設置スペースの確保が必要になる
V2Hを設置するには、本体のサイズ分だけでは不十分です。本体のサイズにプラスして上部と四方に、ある程度のメンテナンススペースが必要になります。具体的には以下のスペースの確保が必要です。
- 幅:約160cm以上
- 高さ:約50cm以上(本体上部から)
- 奥行き:約90cm以上
電気自動車を充電しやすい位置にV2Hを設置するのが理想ですが、これだけのスペースがない場所には設置できないため確認しておきましょう。
※11 参考:ECO DENKI SERVICE
電気自動車のバッテリーが劣化しやすい
電気自動車のバッテリーであるリチウムイオン電池は、充放電する回数が多いほど劣化しやすくなっています。リチウムイオン電池には「サイクル数(0%→100%→0%が1サイクル)」という寿命があり、寿命は6,000〜12,000サイクルほどです。自宅にV2Hがあれば充電回数が増えることが予想されますし、自宅へ給電する可能性も出てきます。そうなれば充放電の回数が増えることになり、劣化しやすくなるでしょう。ただし1日1サイクルのペースでも約16年ほどはバッテリーが使用できる計算なので、よほど多く充放電するなど負荷をかける使い方をしない限りは、それほど心配する必要はないでしょう。
V2Hの国内おすすめメーカーと製品
V2Hの国内おすすめメーカーと製品は以下のとおりです。
- ニチコン「EVパワーステーション」
- デンソー「V2H-充放電基」
- 東光高岳「SmanecoV2H」
それぞれ解説します。
ニチコン「EVパワーステーション」
ニチコンが販売しているV2Hは「EVパワーステーション」です。EVパワーステーションには機能が制限された安価なスタンダードモデルと高機能で高出力なプレミアムモデルがあります。スタンダードモデルは必要最低限の機能で、倍速充電には対応していません。プレミアムモデルは倍速充電に対応しており、停電時でも太陽光発電から電気自動車へ充電することが可能です。さらにスマートフォンから専用アプリで遠隔操作できるなど、利便性に優れています。
【スタンダードモデル(※12)】
型式 | VCG-663CN3 |
機器タイプ | 系統連系 |
負荷タイプ | 特定負荷型 |
出力 | 3kVA未満 |
電圧 | AC101V |
サイズ | 809mm×337mm×855mm |
重量 | 88kg |
希望小売価格(税抜) | 498,000円~ |
保証期間 | 2年間 |
【プレミアムモデル(※12)】
型式 | VCG-666CN7 |
機器タイプ | 系統連系 |
負荷タイプ | 全負荷型 |
出力 | 6kW未満 |
電圧 | AC202V |
サイズ | 809mm×337mm×855mm |
重量 | 91kg |
希望小売価格(税抜) | 798,000円(2023年4月1日出荷分より898,000円~) |
保証期間 | 5年間 |
※12 参考:nichicon
デンソー「V2H-充放電器」
デンソーはニチコンのOEM製品を扱っており「V2H-充放電器」という名称で販売しています。基本的な性能はニチコンの「EVパワーステーション(プレミアムモデル)」と同じですが、異なる点はデンソー製のHEMS(ヘムス:家庭の電気を見える化できる機器)と連携できることです。電気を見える化することにより、電気を最適化することができるため節電に役立ちます。また天気予報との連携により太陽光発電の余剰電力を予測できるようになるため、電気の有効活用をすることも可能です。
【V2H-充放電器(※13)】
型式 | DNEVC-D6075 |
機器タイプ | 系統連系 |
負荷タイプ | 全負荷型 |
出力 | 6kW未満 |
電圧 | AC202V |
サイズ | 809mm×337mm×855mm |
重量 | 91kg |
希望小売価格(税抜) | オープン価格 |
保証期間 | 5年間 |
※13 参考:DENSO
東光高岳「SmanecoV2H」
東光高岳は非系統連系の「SmanecoV2H」を販売しています。非系統連系は、電力会社や太陽光発電と同時に自宅へ電力の供給できない独立したタイプのV2Hです。停電時以外は太陽光発電から電気自動車へ充電することができます。出力自体は3kWとなっているため、倍速充電には対応していません。ただし2分以内の短時間であれば6kWまで使用することが可能です。
【SmanecoV2H(※14)】
型式 | CFD1-B-V2H1 |
機器タイプ | 非系統連系 |
負荷タイプ | 全負荷型 |
出力 | 連続3kW(2分以内であれば6kWも可) |
電圧 | AC202V |
サイズ | 580mm×310mm×742mm |
重量 | 80kg |
希望小売価格(税抜) | オープン価格 |
保証期間 | 1年間 |
※14 参考:東光高岳
電気自動車の充電用コンセントを導入する際のポイント
電気自動車の充電用コンセントを取り付ける際のポイントは、必ず「相見積もり」をするということです。充電用コンセントは、さまざまな業者が販売しており、本体価格や工事費が異なります。また製品によっては「オープン価格(小売業者が販売価格を自由に決められる)」のものもあります。そういった状況を利用して相場を知らない人に対し、かけ離れた価格を提示する悪徳業者の存在も注意しておく必要があります。V2Hを設置する際は、複数社から相見積もりを取って相場を知ることで、設置費用に関して後悔する可能性は少なくなるでしょう。
まとめ
電気自動車の充電用コンセントは自宅で充電するために必要な設備です。電気自動車の需要は増えつつありますが、まだまだ充電スポットが少ないのが現状です。そのため自宅に充電設備を設置する人が増えています。そんななかでもV2Hは電気自動車へ倍速充電ができる他、停電時に電気自動車から自宅へ給電することも可能です。太陽光発電との相性も良く、活用できれば電気料金の節電効果もアップするでしょう。高機能なだけに価格も高くなっていますが、補助金を活用すればお得に設置できます。またリースという選択肢もあり、初期費用0円で太陽光発電やV2Hを設置することも可能です。気になる点はありますが、対策次第では大きな問題にはならないでしょう。V2Hは「倍速充電・節電効果アップ・停電対策」といったメリットがあるため、電気自動車のお供に最適な充電設備といえるでしょう。