毎月の電気代を節約しようと思っているなかで、明細書の「再エネ賦課金(ふかきん)」という項目が気になっている人はいるのではないでしょうか?
再エネ賦課金は、再生エネルギーの活用を普及するために必要な費用の捻出を目的としています。ですが、このような再エネ賦課金の詳細を知らないままだと損をしている気分になったり、節約方法を見逃してしまうかもしれません。
今回の記事は、再エネ賦課金ついて以下の内容を解説します。
- 再エネ賦課金の基礎知識
- 再エネ賦課金の計算方法
- 再エネ賦課金のデメリット
- 再エネ賦課金の節約方法
再エネ賦課金について知ることができ、場合によっては電気代を節約できる可能性があるので、検討している人は参考にしてみてください。
再エネ賦課金とは?
再エネ賦課金(ふかきん)とは、2012年に始まった「再生可能エネルギー固定買取制度(以後、FIT制度)」で太陽光などで発電した電気を買い取るために必要な資金のことです。正式名称を「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といい、賦課金には「公的機関などが必要とする事業の資金を集めるための税金という仕組みで割り当てるお金」といった意味合いがあります。再エネ賦課金は再生可能エネルギー(以後、再エネ)を普及させるための税金ともいえるお金であり、電気を買い取ることで再エネの普及を実現しようとしています。
再エネには以下の特徴があります。
- 石油などの化石燃料ではない
- 基本的にどこでもエネルギーを得られる
- CO2を排出しない
- 永続的に使用できる
これらの条件に当てはまる再エネ買取対象は以下のとおりです。
- 太陽光
- 太陽熱
- 風力
- 地熱
- 水力
- バイオマス(植物から生まれた有機性の資源) など
再エネの普及を進めている理由は、CO2を発生させない資源を活用することで脱炭素社会を実現し地球温暖化防止を防ぐためです。また、日本のエネルギー自給率の改善も目的として挙げられます。日本のエネルギー自給率は2020年度で「12.1%で38カ国中35位(※1)」と低いため、海外からの化石燃料(石油や石炭など)に頼っている状況です。日本の化石燃料依存度は2019年時点で「84.8%(※1)」と高いため、現状では世界的な資源不足や価格の高騰などが起きた際に大きな影響を及ぼします。こうした課題を解決するためには海外からの化石燃料に頼らない再エネの活用が求められており、対策の一貫として再エネ賦課金が課せられています。
※1 参考:経済産業省 資源エネルギー庁
再エネ賦課金の仕組み
再エネ賦課金は、再エネが普及するほど高くなる仕組みになっています。以下で簡単に流れを解説します。
再エネとは風力発電や身近な太陽光発電などの事を指します。
- 再エネ発電事業者は発電した電気を電力会社へ売電する
- 電気を買い取った電力会社は、再エネ発電事業者へ再エネ賦課金を含んだ金額を支払う
- 電力会社は企業や一般家庭に電気を提供する
- 電気の使用者は再エネ賦課金を含んだ電気料金を電力会社へ支払う
- 電力会社は使用者から支払われた再エネ賦課金を国に納付する
- 国は電力会社が再エネの買い取りに必要だった費用を交付金として支払う
再エネによる発電量が普及するほど、買い取るための再エネ賦課金が多くなることが分かります。そうなれば家計への負担も増えていくことになるのですが、果たしていつまで続くのでしょうか。
再エネ賦課金はいつまで続くのか?
再エネ賦課金をいつまで続けるかという見解については正式に公表されていません。しかし「2030年まで導入コストを分割して負担することが計画に組み込まれている」といった話があり、しばらくは再エネ賦課金の継続と価格の上昇が予想されています。
さらに冒頭で少し記載したFIT制度も関係してくる可能性があります。FIT制度は再エネで発電した電気を電力会社に売電する場合、決められた期間内であれば買取単価を国が毎年定める金額で保証してくれる制度です。家庭用太陽光発電の場合は「10kW以下の設置は10年間」とされており、産業用の場合は「10kW以上の設置は20年間」となっています。FIT制度は2022年も有効なため、10kW以上を設置すると20年間は電気の買い取りが継続することになります。再エネ賦課金は再エネを買い取るためのお金なので、最低でも2042年までは継続する可能性があるでしょう。
ただし次で解説する再エネ賦課金の金額は、現時点で環境庁が予想していた金額よりも高くなっています。今後さらに高くなる可能性があることから、国が何らかの対策を行うかもしれません。また「2030年頃がピークになり2048年にかけて減額される見通し」ともいわれています。もちろん行わない可能性を考慮して、上昇し続ける再エネ賦課金への対策を自分たちで考えておくことが大切です。
再エネ賦課金の金額と計算方法
再エネ賦課金の金額は、再エネの活用が普及していることから下記の表で分かるように年々高くなっています。まずは年度ごとの金額と負担額の目安を見てみましょう。
【年度ごとの再エネ賦課金の推移(※2)】
年度 | 再エネ賦課金の単価 | 4人家族の負担額(約400kWh/月 )※3 |
2012年 | 0.22円/kWh | 月額:88円 年額:1,056円 |
2013年 | 0.35円/kWh | 月額:140円 年額:1,680円 |
2014年 | 0.75円/kWh | 月額:300円 年額:3,600円 |
2015年 | 1.58円/kWh | 月額:632円 年額:7,584円 |
2016年 | 2.25円/kWh | 月額:900円 年額:10,800円 |
2017年 | 2.64円/kWh | 月額:1,056円 年額:12,672円 |
2018年 | 2.90円/kWh | 月額:1,160円 年額:13,920円 |
2019年 | 2.95円/kWh | 月額:1,180円 年額:14,160円 |
2020年 | 2.98円/kWh | 月額:1,192円 年額:14,304円 |
2021年 | 3.36円/kWh | 月額:1,344円 年額:16,128円 |
2022年 | 3.45円/kWh | 月額:1,380円 年額:16,560円 |
※2:参考 新電力ネット
※3:金額は1カ月30日で計算
再エネ賦課金の単価は国が一律で決定しており、全ての電力会社で同一の単価を採用しています。また1カ月の再エネ賦課金の計算方法は「再エネ賦課金の単価✕1カ月の電力使用量」で出すことが可能です。
2023年の再エネ賦課金はまだ未定
2023年の再エネ賦課金はまだ発表されておりませんが、再エネの普及率が上昇しているので上昇の可能性が高いと言えます。
再エネ賦課金のデメリット
再エネ賦課金のデメリットは以下の2つです。
- ほとんどの世帯が払わなければいけない
- 年々上がっている
それぞれ詳しく解説します。
年々金額が上がっている
「年度ごとの再エネ賦課金の推移」を見て分かるように、再エネ賦課金は年々上がっています。そして2022年時点では再エネ賦課金事体の単価を下げるような動きはなく、残念ながら今後も上がり続けることが予想されています。再エネ賦課金の上昇は国の目的が果たされるまで行われる可能性があり、どうすることもできないのが現状です。そのため今後も上がり続ける再エネ賦課金への対策は、個人や企業が考えていく必要があります。
ほとんどの世帯が払わなければいけない
再エネ賦課金は、国が再エネ普及のために毎年定めた金額を電気使用量に応じて支払う実質的な税金のようなものです。電気を使用する家庭では原則として必ず支払うことになり、拒否すれば電気料金が未納になってしまいます。ただし必ず支払わなければいけないとされる再エネ賦課金ですが、状況次第では削減できる方法があるため次章で詳しく解説します。
再エネ賦課金の削減する方法
再エネ賦課金の削減する方法は以下の2つです。
- 電気料金プランを見直す
- 太陽光発電を設置する
それぞれ詳しく解説します。
電気料金プランを見直す
1つ目は「電気料金プランを見直す」ことです。再エネ賦課金は再エネで発電された電気を買い取る際に必要なものであり、電力会社からの電気を利用している以上は必ず支払うことになります。そのため現在の電気料金プランを見直して少しでも安くすることで、再エネ賦課金の分を削減できる可能性があります。再エネ賦課金は今後も上昇していくことが分かっているため、この機会に電気料金プランの見直しで対策することも検討してみて下さい。
太陽光発電を設置する
2つ目は「太陽光発電を設置する」ことです。太陽光発電を活用すれば再エネ賦課金の支払いを削減することができます。自宅に太陽光発電を設置して電気を自家発電し、電力会社から電気を購入する量が少なければ削減可能です。
その他、太陽光発電は自然エネルギーを活用して電気を生み出すため、根本的な電気料金の削減ができます。また停電時でも電気が使用できたり、余剰電力を売電できたりするなど多くのメリットがあります。ただし太陽光発電を導入するためには高額な初期費用が必要になってしまうのが気になる点です。一般的な家庭では出力4〜5kWの太陽光発電を導入することが多く、経済産業省による1kWあたりのシステム想定値が25.7万円(※4)となっています。これらを踏まえて計算すると、あくまで目安ですが約100万〜130万円ほどの費用がかかるというわけです。年々、費用が下がってきているとはいえ、まだまだ導入に踏み切れない金額ではあります。国は太陽光発電などの再エネの発電を普及させたいため、導入しやすくするための施策を行っています。
※4 参考:経済産業省 令和4年度以降の調達価格等に関する意見
太陽光発電の初期費用を抑える方法
太陽光発電の初期費用を抑える方法はいくつかありますが、今回は「補助金」「リース」について解説します。
1つ目は補助金についてです。太陽光発電を普及させる目的で、国や地方自治体から補助金が出ていることがあるため確認してみましょう。国の補助金は2022年時点で太陽光発電のみ対象としたものはないですが、「ZHE支援事業」は太陽光発電や蓄電池の設置など特定の条件を満たす住宅に1戸あたり55万円の補助金(※5)が出ます。また地方自治体の補助金でいえば東京都江東区の「地球温暖化防止設備導入助成」があり、最大出力に応じて5万円/kW(個人宅は上限20万円 ※6)という金額になっています。このような補助金を毎年のように国や地方自治体が予算を組んで行っていることが多いため、自ら調べるか太陽光発電の設置業者に聞いてみると良いでしょう。
2つ目はリースについてです。太陽光発電は初期費用0円でリース契約することでも設置できます。例えばシャープの「COCORO POWER」は新築住宅の場合に限り太陽光発電を0円で導入することができ、発電した電気を定額で利用するサービスです。さらにソーラープランの13年契約を満了すれば太陽光発電を譲渡してくれます。エコキュートを設置していないガス併用住宅の場合は、2022年時点で月額のサービス利用料が3,960円(※7)です。リースのほうが月々の電気料金がお得になる場合があるため、現状と比較して検討してみるといいでしょう。ただしリースの場合は、補助金の対象外になる可能性があることを覚えておきましょう。
※5 参考:二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金
※6 参考:(個人住宅用・集合住宅用)地球温暖化防止設備導入助成
※7 参考:COCORO POWER
まとめ
再エネ賦課金は、再エネで発電された電気を買い取るために必要な「実質的な税金」のようなお金です。国が定めた単価と電気使用量によって金額が決定されます。電気を電力会社から買っている家庭は、例外なく再エネ賦課金を支払わなければいけません。また再エネ賦課金は再エネの発電が普及するほど高くなり、ピークは2030年頃といわれています。そのため年々高くなっており、再エネの発電をしていない家庭にとっては負担になっているのが現状です。
再エネ賦課金は必ず支払わなければいけないですが、2つの方法で削減することが可能です。1つ目は料金プランを見直すことで、全体的な電気料金を下げることで少しでも再エネ賦課金の分を補おうという対策です。2つ目は太陽光発電を導入して、自家発電・自家消費することで再エネ賦課金削減する対策です。特におすすめなのが後者の太陽光発電で、補助金などを活用すればお得に導入できます。さらに電気料金の削減や停電対策、売電収入を得られるなどのメリットがあります。年々上がっていく再エネ賦課金はどうすることもできないため、太陽光発電を導入するなどの対策を検討してみましょう。